スイッチの基礎知識:技術編
アクチュエーター
1.動作と位置
2.用語解説
分類 | 用語 | 略号 | 定義 |
---|---|---|---|
力 | 動作に必要な力 Operating Force |
OF | 自由位置から動作位置に動かすのに必要なアクチュエータに加える力。 |
戻りの力 Releasing Force |
RF | 動作限度位置から戻りの位置まで動かすのに必要なアクチュエータに加える力。 | |
全体の動きに必要な力 Total Travel Force |
TTF | 動作位置から動作限度位置まで動かすのに必要なアクチュエータに加える力。 | |
動き | 動作までの動き Pre Travel |
PT | アクチュエータの自由位置から動作位置までの移動距離。 |
動作後の動き Over Travel |
OT | アクチュエータの動作位置から動作限度位置までの移動距離。 | |
全体の動き Total Travel |
TT | アクチュエータの自由位置から動作限度位置までの移動距離。 | |
応差の動き Movement Differential |
MD | アクチュエータの動作位置から戻りの位置までの移動距離。 | |
位置 | 自由位置 Free Position |
FP | 外部から力が加えられていないときのアクチュエータの位置。 |
動作位置 Operating Position |
OP | アクチュエータに外力が加えられ可動接点が自由位置の状態からちょうど反転するときのアクチュエータの位置。 | |
もどりの位置 Releasing Position |
RP | アクチュエータの外力を減少させ可動接点が動作位置の状態から自由位置の状態に反転する時のアクチュエータの位置。 | |
動作限度位置 Total Travel Position |
TTP | アクチュエータがアクチュエータ止めに到達した時のアクチュエータの位置。 |
動作特性
1. Force(操作力)-Stroke(操作量)特性
動作① FP→OP
アクチュエータが押し込まれ、操作力OFでスイッチ動作(オン)します。
動作② OP→TTP
アクチュエータがさらに押し込まれ、オン状態が保持されます。
動作③ TTP→RP
アクチュエータの押し込みが解除され、操作力がRFになるとスイッチ復帰(オフ)になります。
操作力(OF)を大きくすると、接点接触力が大きくなり、接触抵抗が小さくなります。
2. CR(接触抵抗)-CF(接点接触力) 特性
接触抵抗は、接点接触力により変動します。
接点接触力が大きければ、接触抵抗は小さくなり、安定した接触が得られます。
3. CF(接点接触力)-S(操作量) 特性
機械的特性
機械的特性とは、接点に通電しない状態での特性をいいます。
電気的特性
電気的特性とは、接点に通電した状態での特性をいいます。
スナップアクション
スナップアクション機構とはスイッチの操作速度や操作力とは無関係で、一定のストローク位置において瞬時に接点が切り替わる機構をいいます。
スナップアクション機構に対して、操作する速度がそのまま接点の移動速度となる機構をスローアクション機構といいます。
1. 原理
下じきをそらせておいて、山になっている部分を押していくと、あるところで反対側にペコッと切り替わる動きと似ています。
2. 特徴
- 接点の切り替わる速度が速いため、接点間に生ずるアークの継続時間が短くなります。
そのため接点の消耗が少なくなり、安定した特性が維持できます。 - 小形サイズのスイッチでも大きな電流を開閉できます。
- 交流は、電流の流れが交互に変わるため、同じ電圧・電流値で比較すると、直流よりもアークが切れやすくなります。
したがって、交流のほうが、接点へのダメージが小さいといえます。
スイッチの押ボタンに力を加えると、可動ばねの力で可動接点が固定接点b(NC)から固定接点a(NO)にすばやく切り替わります。
また、押ボタンの力をゆるめていくと可動ばねの力で可動接点は、固定接点a(NO)から固定接点b(NC)にすばやく戻ります。
切り替わり時間
操作速度が速すぎると、バウンシング時間が長くなり、極小の接点間隔で繰り返し開閉したことになるため、アークによる接点消耗が大きくなります。
樹脂材料
スイッチ内部の機構を保護するためケース、カバーには絶縁性と機械的強度に優れた樹脂材料を使用します。
材料名 | 材料記号 | 特徴 |
---|---|---|
フェノール樹脂 | PF | 熱硬化性樹脂。難燃性や耐トラッキング性に優れる。 |
ポリブチレンテレフタレート樹脂 | PBT | 熱可塑性樹脂。マイクロスイッチには、ガラス繊維強化タイプが多く用いられる。 |
ポリアミド(ナイロン)樹脂 | PA | 熱可塑性樹脂。耐熱性が高いタイプあり。 摺動性がよく、吸水率が高い。 |
ポリフェニレンサルファイド樹脂 | PPS | 熱可塑性樹脂。PAよりも優れた耐熱性を有している。 はんだ耐熱性などを必要とするものに採用されている。 |
材料の種類としては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の2つに分けられます。
- 熱硬化性樹脂: 熱を加えることで硬化する樹脂 で再成形不可。
- 熱可塑性樹脂: 熱を加えると溶ける樹脂 で再成形できるためリサイクル可能。
ケースおよびカバーなどの材料としては、リサイクル性などから、PBTなどの熱可塑性樹脂が主流となっています。
保護構造
スイッチが固体異物や水に対する能力の程度を保護構造の等級で表します。
第1記号:固体異物に対する保護等級
等級 | 保護の程度 | |
---|---|---|
0 | 粉塵の浸入に対して保護されていない。 | |
1 | 直径 50 mm 球体の検査物体が、部分的にしか内部に侵入しない。 | |
2 | 直径 12,5 mm 球体の検査物体が、部分的にしか内部に侵入しない。 | |
3 | 直径 2,5 mm 球体の検査物体が、全く内部に侵入しない。 | |
4 | 直径 1,0 mm の検査物体が、全く内部に侵入しない。 | |
5 | 機器の正常動作や安全性を阻害するほどの粉塵が、内部に侵入しない。 | |
6 | 粉塵が内部に侵入しない。 |
第2記号:水の浸入に対する保護等級
等級 | 保護の程度 | 試験法概要(真水を使用して試験する) | ||
---|---|---|---|---|
0 | 特に保護なし | 水の浸入に対して保護されていない。 | 試験なし | |
1 | 水の滴下に対する保護 | 垂直に落下する水滴によって、有害な影響を受けない。 | 滴水試験装置にて鉛直滴下を10分間散水する。 | |
2 | 水の滴下に対する保護 | 垂直方向から15°まで製品を傾けた状態で、垂直に落下する水滴によって、有害な影響を受けない。 | 滴水試験装置にて15°傾けて設置し、10分間(各方向2.5分間)散水する。 | |
3 | 散水に対する保護 | 垂直方向から60°までの方向からの水飛沫によって、有害な影響を受けない。 | 右図のテスト装置にて、鉛直方向から両側に60°までの角度で10分間散水する。 | |
4 | 水の飛沫に対する保護 | あらゆる方向からの水飛沫によっても、有害な影響を受けない。 | 右図のテスト装置にて、あらゆる方向から、10分間散水する。 | |
5 | 噴流水に対する保護 | あらゆる方向からの噴流水によっても、有害な影響を受けない。 | 右図のテスト装置にて、あらゆる方向から外被表面積1m2当り1分間、のべ少なくとも3分間以上散水する。 | |
6 | 暴噴流に対する保護 | あらゆる方向からの強い噴流水によっても、有害な影響を受けない。 | 右図のテスト装置にて、あらゆる方向から外被表面積1m2当り1分間、のべ少なくとも3分間以上散水する。 | |
7 | 水中への浸漬に対する保護 | 規定の圧力と時間の条件で一時的に浸水させた場合に、有害な影響を受けない。 | 水深1m(機器の高さが850mmより低い場合)に30分間没する。 |
※水中での動作を保証するものではありません。
シールタイプは IP-67の保護等級を保持しています。