スイッチの基礎知識:使用編
定格
定格とは、スイッチの特性および性能の保証基準となる値をいい、一般的に接点に通電できる最大の電流値、定格通電電流をさします。この値は印加する電圧の大きさと負荷の種類によって異なります。
スイッチの接点に印加できる電圧および、その負荷に通電できる最大の電流値を規定しています。
一般的に電圧が低い方が大きな電流を流すことができます。
突入電流
突入電流とは、負荷を動作させる電気回路に電源を投入した瞬間に流れ、定常よりもはるかに大きな電流をいいます。
モータのような電動機負荷、白熱電球のようなランプ負荷は突入電流が発生します。
1. 突入電流
抵抗負荷
電源オン直後から電流は一定のまま。
ランプ負荷
電源オン直後は定常の約10倍の突入電流が流れ、その後は一定。
2. 突入電流と定格
「電動機負荷」、「ランプ負荷」というように負荷別の定格値が表示されていれば、該当する値でスイッチの使用可否を判断します。抵抗負荷しか表示されていなければ、使用する負荷の突入電流を概算して、定格を超えないかどうかで判定します。
例:
ヒータ | → | 抵抗負荷 | 定常電流<抵抗負荷定格値 |
---|---|---|---|
白熱灯 | → | ランプ負荷 | 定常電流×10<抵抗負荷定格値 |
モータ | → | 電動機負荷 | 定常電流×6<抵抗負荷定格値 |
定格には突入電流も考慮してください。
直流回路
アークとは、スイッチが電気回路をオフするとき、接点間に発生する火花のことをいいます。
電流が大きいほど発生しやすく、接点を切り替える速さが遅いほど継続時間が長くなります。継続時間が長いと、接点の消耗が激しくなります。
直流回路の開閉
電流の流れる方向が変わる交流回路では、電圧がOVになるたびにアークは消滅します。一方、直流回路では、流れる方向が一定のままなのでアークの継続時間が長くなって接点が消耗し、耐久性が低下します。
また、接点の移転現象が起こり、接点に凸凹ができることでひっかかって開離できない誤動作の原因になります。
当社では磁気吹消機構を備えた直流電流専用のマイクロスイッチ 形Xシリーズをご用意しています。
操作速度
チャタリングとは、スイッチがオン状態にもかかわらず、外部振動などの影響により一時的に接点が開離し、オン/オフを繰り返し出力することをいいます。
バウンシングとは、スイッチの動作直後に接点の切り替わりによる衝撃で接点が跳ね、オン/オフを繰り返す現象です。
1. 操作速度が極端に遅いとき
接点の接触が不安定になりチャタリングを起こします。
誤った信号を出したり、アークのため接点劣化を引き起こします。
2. 操作速度が極端に速いとき
振動・衝撃で接点がバウンシングを起こします。
誤った信号を出したり機械的ストレスで破損の原因になります。
微小負荷
微小負荷とはマイコン搭載などの電子機器に入力する信号用パルスを得るため、電流が数mAの回路を開閉するときの負荷をいいます。
1. 微小負荷用スイッチ
微小負荷の場合、酸化や硫化により生じた接点面の皮膜を破壊するエネルギーが得られず、接触不良が問題となる場合があります。皮膜の影響を受けにくい材質であるが金系の接点やクロスバー形状の接点を使用した微小負荷タイプのスイッチのご使用をおすすめします。マイクロスイッチでは、その主要な機種に品揃えしています。
2. 微小負荷の使用
接触不良を起こさないため、スイッチに規定された電流-電圧の使用領域の確認も行ないます。
たとえば、
定格 | DC30V | 0.1A |
---|---|---|
最小適用負荷 | DC5V | 1mA |
のスイッチでは右の図の、台形の使用領域に入るようにします。
最小適用負荷はN水準参考値(JIS C5003)としています。
これは、200万回の動作で接触抵抗が不安定になる偶発故障が1回発生することを表します。
微小負荷用スイッチを使い、使用条件がその使用領域にはいることを確認してください。
バウンシングやチャタリングによるノイズやミスパルス防止にCR回路などの吸収回路を設けてください。
開閉時に突入電流が発生する負荷の場合、耐久性の低下を生じる原因となりますので、接点保護回路を挿入してください。
耐久性
耐久性(寿命)とはスイッチを使い続けていくうちに、動作特性や性能が保証している値からはずれてしまうまでの、開閉できる回数をいいます。
機械的耐久性(寿命)と電気的耐久性(寿命)の2種類で示されています。
1. 機械的耐久性(寿命)
スイッチに通電せず、指定された操作ひん度とストロークで動作させたときの耐久性能。
接点を開閉していくと、接点摩耗(*1)などがおこります。
*1 接点摩耗:接点がすり減ること。
2. 電気的耐久性(寿命)
スイッチに負荷を接続し、定格電流・電圧を印加し、指定された操作ひん度とストロークで動作させたときの耐久性能。
接点を開閉していくと、接点消耗(*2)などがおこります。
*2 接点摩耗:アーク等により接点の材料が溶融、飛散すること。
操作ストローク
操作ストロークとはスイッチを正しく動作させるために操作体から受けるアクチュエータの動きをいいます。
- 通常時、アクチュエータは必ず自由位置(FP)にあるようにしてください。(操作体はアクチュエータから離れている)
- スイッチの動作位置(OP)および、復帰位置(RP)付近では操作体の動きを止めないでください。
- 操作体の動作反転位置(スイッチの適正押込量)を設計する際は、スイッチの動作後の動き(OT) 規格値を目安とし、 操作体、スイッチの押込量が調整可能になるように行ってください。
- スイッチを装置に組み付ける際、操作体の動作反転位置は、スイッチの動作位置(OP)から動作限度位置(TTP) までの範囲のうち、60~90%になるように設定してください。
故障
主な故障とその原因・対策
故障状況 | 推定原因 | 対策 | |
---|---|---|---|
電気的特性不良 | 接触不良 | 接点への異物の付着 | シール形スイッチを使って異物の侵入を防ぐ。 |
接点表面への皮膜生成 | ワイピング効果のある、金系接点のスイッチを使用する。 | ||
ストローク設定ミスによる接点接触力の不足 | 適切なストローク設定をする。 | ||
誤動作 | 振動・衝撃による接点開離(チャタリング) | 接点接触力が大きい(動作力OFが高い)スイッチを使用する。 | |
溶着 | 接点の開閉容量を超えている | 高容量のスイッチを使用する。接点保護回路を入れる。 | |
絶縁劣化 | アークにより接点が飛散している | 高容量のスイッチを使用する。 | |
機械的特性不良 | 動作不良 | ストローク設定ミス、過大荷重や衝撃動作による機構破損 | 正しいストロークを設定、操作速度、荷重など適切な操作を行う。 |
異物が侵入して機構や接点にひっかかっている | シール形スイッチを使って異物の侵入を防ぐ。 | ||
外部破損 | ドッグ・カムの形状や不適切な操作方法によるアクチュエータへの過大荷重 | ドッグ・カムの設計変更、適切な操作を行う。 |