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フォト・マイクロセンサの基礎知識:設計編Ⅰ

フォト・マイクロセンサ (フォトインタラプタ) をご使用いただくうえで具体的にどう設計するか、ここでは発光素子側について説明します

発光素子の特性

オムロンのフォト・マイクロセンサの発光素子には、赤外LEDと可視 (赤色) LEDが使用されています。図3に赤外LEDを使用した形EE-SX1081のLED順電流―順電圧特性を示しました。

ここでの大きなポイントは、それらの順方向特性には差があるということです (順方向特性とは、アノードからカソードに順電流IFを流したとき、LEDの両端の電圧 (降下) がどのようになるかを表わしたものです) 。図3より、赤外LEDに比べ赤色LEDは順電圧VFが大きくなることがわかります。

常用 (実使用) 電流レベルにおける順電圧はVFは、赤外LEDで1.2V程度、赤色LEDで1.8~2V程度となりますので、概念としてご留意ください。

図3. LED順電流̶順電圧特性 (代表例) 形EE-SX1081
LED順電流̶順電圧特性 (代表例)

駆動電流レベルについて

発光素子側の設計でとくに重要なことは、順電流IFをどれだけ流すかということです。フォト・マイクロセンサ (フォトインタラプタ) はご使用条件上の制約があるため、少なすぎても多すぎてもいけません。まず最初に上限について述べます。上限は絶対最大定格に示される値によって規定されており、カタログなどから読みとってください。形EE-SX1081を例にとりますと、絶対最大定格 (Ta=25°C) と書かれた項目の1番目に直流順電流IF=50mAとなっており、これより順電流IFの最大値は50mAとなります。
しかしながら、これは周囲温度Ta=25°Cにおける規定ですので、実際のご使用 (温度範囲) にあわせて軽減することが必要であり、カタログに記載されている温度定格図をみていただくことによりわかります (形EE-SX1081の例を図4に掲げました)。
図4において横軸は周囲温度Ta、縦軸は直流順電流IFとなっており、この図より、例えばご使用温度の上限が60°Cであるとしますと、横軸の60°Cにおけるたて軸の値が、ご使用温度範囲内で流すことのできる上限の電流値となります。
図4よりTa=60°Cにおける順電流IFは約27mAとなりますので、ご使用状態において、27mAより絶対越えて使用してはならないものとしてお考えください。

図4. 温度定格図 形EE-SX1081
温度定格図 (形EE-SX1081)

■ 絶対最大定格 (Ta=25℃) 形EE-SX1081

項目 項目 定格値 単位
発光側 順電流 IF 50*1 mA
パルス順電流 IFP 1*2 A
逆電圧 VR 4 V
受光側 コレクタ・
エミッタ間電圧
VCEO 30 V
エミッタ・
コレクタ間電圧
VECO --- V
コレクタ電流 IC 20 mA
コレクタ損失 PC 100*1 mW
動作温度 Topr -25~+85
保存温度 Tstg -30~+100
はんだ付け温度 Tsol 260*3

*1. 周囲温度が25°Cを越える場合は、温度定格図をご覧ください。
*2. パルス幅≦10μs、繰返し100Hz
*3. はんだ付け時間は10秒以内

つぎに下限について考えます。順電流IF=0では発光しませんので、いくらかは流さなければなりません。詳細な説明は割愛しますが、赤外LEDを使用したものは5mA以上、赤色LEDを使用したものは2mA以上としてください (あまり低いと安定した発光出力が得られないためです)。
では最適値はどれ位かというと、オムロンのフォト・マイクロセンサ (フォトインタラプタ) ではつぎのようにお考えいただくと便利です。まず、カタログの電気的特性の中の光電流ILという項目をご覧ください。
この光電流ILの詳細は後述しますが、LEDに順電流IFをどれだけ流したら、どれだけの出力電流が得られるかという性能を表わすもので、フォト・マイクロセンサにとって最も重要な特性の1つです。
この光電流ILに記載されている順電流IFの条件 (たとえば形EE-SX1081ですとIF=20mA) にある値を適切なレベルの電流としていただければ使いやすい出力が得られ、出力処理 (回路設計) も容易となります。

■ 電気的および光学的特性 (Ta = 25℃) 形EE-SX1081

項目 項目 特性値 単位 条件
MIN. TYP. MAX.
発光側 順電圧 VF - 1.2 1.5 V IF=30 mA
逆電流 IR - 0.01 10 μA VR=4 V
ピーク
発光波長
λP - 940 - nm IF=20 mA
受光側 光電流 IL 0.5 - 14 mA IF=20 mA,
VCE=10 V
暗電流 ID - 2 200 nA VCE=10 V,
0 ℓx
漏れ電流 ILEAK - - - μA -
コレクタ・
エミッタ間
飽和電圧
VCE
(sat)
- 0.1 0.4 V IF=20 mA,
IL=0.1 mA
ピーク分光
感度波長
λP - 850 - nm VCE=10 V
上昇時間 tr - 4 - μs VCC=5 V,
RL=100 Ω
IL=5 mA
下降時間 tf - 4 - μs VCC=5 V,
RL=100 Ω
IL=5 mA

設計法

ではつぎに、具体的にどのように定数を設計するかを考えます。
図5は発光素子を駆動する基本回路です。
ここで注意することは、必ず制限抵抗Rを挿入しなければならないことです。もし、抵抗なしに、LEDに順方向バイアスをかけると、順方向の抵抗 (インピーダンス) 分は低いので、理論上無限大の電流が流れ、LEDは焼損してしまいます。

図5. 基本回路
基本回路

なお、LEDにどれだけ電圧をかけたら良いかという質問を受けますが、電流制限抵抗さえつければ何Vでも良いということになります。
しかしながら、注意しなければならないのは下限があることで、図3の順方向特性例でわかるように、1.2V~2Vぐらいはかけないと順電流が流れないため、これ以上の電圧が必要となります。
電子回路の電源電圧は、LEDの順電圧の最大値以上の電圧を印可する必要があるため、仕様の最大値から赤外LEDは2V以上、赤色LEDは3V以上を目安としてください。

具体的な設計手段は下記の2点です。

  • ・順電流 (IF) の決定
  • ・抵抗Rの決定 (図5)

まず順電流IFは、上記で述べました最適レベルの電流となるように決定します。形EE-SX1081ではIF=20mAのため、IF=20mA程度となるように抵抗Rを決定します。

抵抗Rは、 (式1) で求めることができます。例として電源電圧VCC=5Vとして考えます。
(式1) で不明な数字は順電圧VFとなりますが、これは図3の順方向特性から求めます。図3よりIF=20mAにおける順電圧VFは約1.2Vとなりますので、これらを (式1) に代入します (式2)。

抵抗Rの算出

なお、電源電圧VCCや順電圧VFさらには抵抗値にバラツキがあり、IFが変動しますので絶対最大定格値に対し余裕があるか否かを確認するようにしてください。なお、図3の抵抗RとLEDの位置は逆であってもかまいません。

また、LEDに逆電圧がかかることがある場合、 (ノイズ・サージも含め) は、図6のようにLEDと逆並列に整流用ダイオードを挿入してください。
なお、LEDの駆動方法には、これまでの説明のような直流通電 (駆動) 以外にパルス駆動がありますが、これはフォト・マイクロセンサの場合あまり使用されていませんのでここでは割愛します。

図6. 逆電圧保護回路

逆電圧保護回路

以上より、設計のポイントは下記の事項となります。

  • 赤外LEDのVFは約1.2V、赤色LEDのVFは約2Vである。
  • IFには最適レベルがある。
  • IFを選定してから制限抵抗値を設計する。
  • 逆電圧が加わるときはLEDと逆並列にダイオードを入れる。

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