リレーの基礎知識:使用編
定格
リレーの定格には、コイル部の仕様定格と接点部の負荷定格があります。
1. コイル部の仕様
コイル部の仕様選定が適切でない場合、本来の性能が得られないだけでなく、過電圧印加などによるコイル焼損の原因となります。 また、 交流操作形コイル仕様については、各リレーの適用電源(定格電圧、定格周波数)をご確認の上、正しく選定してください。
リレーによっては、ご使用になれない定格電圧、定格周波数があります。 選定が適切でない場合には、異常発熱や誤動作の原因になります。 交流操作形コイル仕様の詳細については下表をご確認ください。
AC100Vの例
定格の呼称* | 適用電源(定格電圧・定格周波数) | 商品マーキングでの表現 | カタログでの表現 |
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1定格 | AC 100V 60Hz | 100VAC 60Hz | AC 100V 60Hz |
2定格 | AC 100V 50Hz、AC 100V 60Hz | 100VAC | AC 100V |
3定格 | AC 100V 50Hz、AC 100V 60Hz AC 110V 60Hz |
100/110VAC 60Hz、100VAC 50Hz または 100/(110)VAC |
AC 100 / (110) V |
4定格 | AC 100V 50Hz、AC 100V 60Hz AC 110V 50Hz、AC 110V 60Hz |
100 / 110VAC | AC 100 / 110V |
*Note: この呼称はJISなどで定められた呼称ではありません。
2. 接点部の仕様
リレーは大きく分けて有接点リレー(メカニカルリレー)と無接点リレー(MOS FETリレー、ソリッドステート・リレー)に分類されます。
接点定格は、一般的に抵抗負荷を基準に表示しています。負荷ならびに要求耐久性に応じて最適な機種をお選びください。
突入電流
突入電流とは、負荷を動作させる電気回路に電源を投入した瞬間に流れ、定常よりもはるかに大きな電流をいいます。モータのような電動機負荷、白熱電球のようなランプ負荷は突入電流が発生します。
1. 突入電流
抵抗負荷
電源オン直後から電流は一定のまま。
ランプ負荷
電源オン直後は定常の約10倍の突入電流が流れ、その後は一定。
2. 突入電流と定格
TV定格(UL/CSA)とは、ULおよびCSA規格の中の耐突入電流性能を評価する代表的な定格の一つで、そのリレーが突入電流を含む負荷を開閉できる程度を示しています。
例えば、テレビ電源用リレーはTV定格を取得しているリレーである必要があります。開閉試験(耐久テスト)は、負荷としてタングステンランプを使用し、トータル25,000回の開閉に耐えることを要求しています。
TV定格 | 突入電流 | 定常電流 | 代表機種例 |
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TV-3 | 51 A | 3 A | G2R-1A G2RL-1A-E-ASI |
TV-5 | 78 A | 5 A | G5RL-1A(-E)-LN |
TV-8 | 117 A | 8 A | G4W-1112P-US-TV8 G5RL-U1A-E G5RL-K1A-E G5RL-1A-E-TV8 |
TV-10 | 141 A | 10 A | G7L |
TV-15 | 191 A | 15 A | G4A |
直流回路
アークとは、リレーが電気回路をオフするとき、接点間に発生する火花のことをいいます。電圧/電流が大きいほど発生しやすく、接点を切り替える速さが遅いほど継続時間が長くなります。 継続時間が長いと、接点の消耗が激しくなります。
直流回路の開閉
電流の流れる方向が変わる交流回路では、電圧がOVになるたびにアークは消滅します。一方、直流回路では、流れる方向が一定のままなのでアークの継続時間が長くなって接点が消耗し、耐久性が低下します。 また、接点の転移現象が起こり、接点に凸凹ができることでひっかかって開離できない誤動作の原因になります。
接点を直列に接続すると、等価的に接点間隔をひろげることになり、アークの遮断に有効です。
微小負荷
微小負荷を開閉する場合、接点の接触抵抗が問題とされることがあります。偶発的に高い接触抵抗値が生じても、次の動作で回復したりします。また、接点被膜の生成などにより接触抵抗値が上がることもあります。 接触抵抗値について、その値を故障とするかどうかは、使用回路に問題が生じるかどうかで判断します。このため、リレーの接触抵抗の故障の基準は初期値のみ規定し、最小適用負荷はひとつの目安としてP水準(参考値)などで故障率(*)を表現しています。
* 故障率
個別に規定する試験の種類および負荷でリレーを連続開閉した時の単位時間(動作回数)内に故障をおこす割合です。
この値は、開閉ひん度、雰囲気、期待する信頼性水準によって変化することがあります。実使用上は、実使用条件にて実機確認を必ず実施してください。
本カタログでは、この故障率をP水準(参考値)として記載しています。これは、信頼水準60%(λ 60 )での故障水準レベルを表しています。(JIS C5003)
微小負荷レベルでの使用について
微小負荷レベルで使用する場合は、負荷の種類、接点材質、接触方式を考慮の上、適切な機種を選定ください。 微小負荷レベルでのご使用の場合、接点材質、接触方式により信頼性が異なってきます。例えば、シングル接点とツイン接点とではツイン接点のほうが単純に並列冗長の期待度が高いので信頼性が高くなっています。
耐久性
耐久性(寿命)とはリレーを使い続けていくうちに、動作特性や性能が規定している値からはずれてしまうまでの開閉できる回数をいいます。機械的耐久性(寿命)と電気的耐久性(寿命)の2種類で示されています。
- 機械的耐久性(寿命)
- 接点に負荷を加えないで、規定の開閉ひん度で開閉動作させたときの耐久性のことです。
- 電気的耐久性(寿命)
- 接点に定格負荷を加え規定の開閉ひん度で開閉させたときの耐久性のことです。
開閉容量について
各リレーの開閉容量の最大値やグラフを確認いただき、用途に合ったリレーを選定ください。選定の目安として開閉容量の最大値および耐久性曲線を活用ください。ただし、求められた値は目安値ですので、必ず実機にてご確認ください。開閉容量の最大値および耐久性曲線グラフの見方は以下の通りです。
例えば、接点電圧(V1) が決まっている場合の最大接点電流(I1) は特性データの交点で求めることができます。また、逆に(I1) が決まっていて、最大接点電圧(V1) を求めることもできます。次に求められた(I1) から耐久性曲線データで動作回数を求めることができます。
例えば、下記のような場合、接点電圧=40Vなら接点開閉電流=2Aです。……*1
また、最大接点電流2Aでの動作回数は、約30万回です。……*2
開閉容量の最大値
耐久性曲線
故障
リレーを使用する装置の場合、リレーに関する色々なトラブルが発生することがあります。そのとき、FTA(Fault Tree Analysis)的考え方から、その原因を追求しなければなりません。下表では、リレーに関する故障モードを取りあげ、故障原因の推定を行います。
リレーの外部から見た現象
故障 | チェック内容 | 推定される原因 |
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リレーが働かない | 1. 入力電圧がリレーに届いているか |
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2. 入力電圧に見合った仕様のリレーが使われているか |
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3. 入力電圧の電圧降下はないか |
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4. リレーが破損していないか |
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5. 出力回路に異常がないか |
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6. 接触不良していないか |
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リレーが復帰しない | 1. 印加電圧が完全に切れているか |
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2. リレーの異常 |
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リレーが誤動作する 表示灯が異常点灯する |
1. リレーの入力端子に異常電圧が加わっていないか |
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2. 過大な振動、衝撃が加わってないか |
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焼損 | 1. コイル部からの焼損か |
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2. 接点部からの焼損か |
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リレーの内部から見た現象
故障 | チェック内容 | 原因推定 |
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接点溶着 | 1. 大きな電流が流れなかったか |
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2. 接点部の異常振動がなかったか |
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3. 開閉頻度が多すぎないか | - | |
4. リレーの寿命がきてないか | - | |
接触不良 | 1. 接点表面に異物が付着していないか |
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2. 接点表面が腐食していないか |
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3. 機械的接触不良になっていないか |
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4. 接点が消耗してないか |
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うなり | 1. 印加電圧が不足していないか |
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2. リレータイプの誤りがないか |
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3. 電磁石の動作不完全がないか |
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接点の異常消耗 | 1. リレー選定はあっているか |
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2. 接続負荷へのサージ吸収対策などの配慮はなされているか |
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