開発者インタビュー 世界初*、半導体リレーで「T型回路構造」を採用した MOS FETリレーモジュール 形G3VM-□□MT編

本ページではこの開発にはどのような思いが込められているのか、MOS FETリレーモジュール「形G3VM-□□MT」の開発者である事業統轄本部 汎用商品事業部 芥川智亘にインタビューしていきます。

「形G3VM-□□MT」(通称"Tモジュール")とはいったいどのような製品でしょうか。

G3VM-21MT.JPG

"Tモジュール"は簡単に言うとメカニカルリレー(以下「メカリレー」という)の性質をもった半導体リレーのモジュールになります。
半導体リレーは長寿命ですが、メカリレーと違って完全なONとOFFがありません。
抵抗がすごく高い状態(OFF)と低い状態(ON)を切り替えるもので、高い状態では僅かに電流が流れてしまいます。これを"漏れ電流"といいます。
一方、メカリレーにはOFF時で漏れ電流はなく、さらには高い周波数領域にも対応できる性能を持っています。
Tモジュールはこれらメカリレーの性能を兼ね備えた半導体リレーなのです。

オムロン㈱事業統轄本部 汎用商品事業部 芥川智亘の写真
オムロン株式会社 エレクトロニック&メカニカルコンポーネンツビジネスカンパニー
事業統轄本部 汎用商品事業部 芥川智亘

(所属部署は開発当時のものです)

メカリレーと半導体リレーの両方の性質が加わるとどのように良いことがあるのでしょうか?また、なにか課題はありますか?

私が担当している半導体検査装置業界での課題を解決できるようになります。
半導体検査装置業界では、寿命や接触信頼性(有接点リレーにおいて、電流の導通を正常に行う上で必要となる接点接触時の信頼性)の面でメカリレーから半導体リレーへ置き換える必要性に迫られていますが、難しいケースもあります。
課題は、微小領域の電流電圧も扱いつつ、さらに広い周波数領域をカバーすることなのですが、通常の半導体リレーの性質では対応できません。
その結果、現在もリードリレー(メカリレーの一種)の割合が半分以上を占めています。

モジュールの"T"とはどのような構造なのでしょうか?

このTこそが今回の課題を解決に導いた要になります。
実はTモジュールの中には3つの半導体リレーが入っていて"T"の字に並べられており、そこから名前をとっています。
"T"の字構造にすることによってメインで流す線と漏れ電流を流す線を作り出すことができます。(下図参考)

漏れ電流の説明図

漏れ電流の説明図

T型回路の説明図

T型回路の説明図

半導体リレーにメカリレーの特性を取り入れるといったTモジュールの発想は、どこからそのようなアイデアが生まれたのでしょうか?

私は、元々半導体リレーに携わる前にメカリレーを取り扱っていました。
メカリレーの良さを分かっていたからこそ、このような発想ができたと思います。

開発をしている中での苦労などはありましたか?

製品の構想はできていたのですが、オムロンリレーアンドデバイス㈱だけでは作ることができなかったので、実現する手段にかなり悩みました。
そのため、センサ事業部に相談することで構想を形にして具体的な構造を明確にしていきました。構造が決まっても初めて作るものなので、設計方法や評価基準についてもいろいろ協力を得ながら進めました。

今後の商品展開はどのようになっていくでしょうか?

T型回路を1パッケージに収めた世界初の構造*として特許も取得していますが、今回モジュールという切り口でパッケージの作り方を開発できたことが大きな成果でした。
内部構造や搭載素子を柔軟に変えることで派生品を容易に開発することができるようになったので、新たなアイデアを素早く商品化できるモノづくりのスタートに立つことができたと思っています。今後もお客様の課題に対していち早く解決に貢献できるよう、新たなアイデアを創造し、商品化していきたいです。

最後に、実際にどのような想いで新たな製品を創出しているか教えていただけますか?

私自身リレーが好きでこの会社に入りました。なぜかというと汎用性がすごく広いからです。設計者が思いのまま好きなように使える、設計者次第でいろいろなものに使える、使い勝手の良さこそがリレーのメリットだと思っています。新たな使い方を見出せて、お客様の課題解決につなげたいとの想いを込めたのが、このTモジュールなのです。
リレーは古いものと思われがちなのですが、今後も可能性のある製品だと思っているので、これからも新たな開発をしていきたいと思います。

*リレーモジュールとして世界初となる、複数のMOS FETリレーを組み合わせて構成した「T型回路構造」を採用(2021年8月、当社調べ)