小さくて高容量遮断。小型高容量遮断のDCパワーリレー形G9EK 500A

img 「脱炭素」など環境への配慮やエネルギー費の高騰により、全世界がいま、化石燃料から再生可能エネルギーへと加速度的にシフトしています。太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーは、天候に依存するため非常に不安定な電力です。再生可能エネルギーを効果的に活用するためにはバッテリ(蓄電)が必要不可欠となります。家庭や建物への電力供給以外にも、ガソリンやディーゼル燃料を使用している乗り物などのモビリティ分野でも、再生可能エネルギーを利用したDC駆動(バッテリ駆動)の移動手段や輸送機器の発展が期待されています。「電気をたくさん貯めて、たくさん使いたい」という蓄電ニーズを実現するために、DCパワーリレーにはさらなる「高容量」が求められています。
また、多くの機能の組み込みが進む機器では、限られた空間での高密度化が求められており、スペース効率も非常に重要視されています。

コンタクタとリレーの違い

100Aを超えるような大電流通電が必要なアプリケーションでは、コンタクタ(接触器)が使用されます。
リレーとコンタクタはどちらも回路のさまざまな部分を開閉するために使われますが、主な違いはコンタクタは大電流、リレーは小さな電流で使用されます。しかし、大電流で使用されるコンタクタは、リレーよりも堅牢で大きく、また開閉時の動作音も大きくなりがちです。

コンタクタとリレー、両者のメリットを兼ね備えたリレーがオムロンのDCパワーリレーです。

(コンタクタ)高容量:サイズが大きい、過酷な環境で使用可能:動作音が大きい
(リレー)容量が小さい:小型、使用環境が限定的:動作音が小さい
(DCパワーリレー)DC パワーリレーはリレーとコンタクタのいいとこ取り!小型、高容量、動作音が小さい、耐環境性あり(ハーメチックタイプ)

DCパワーリレーとは

オムロンのDCパワーリレーは、通称コンタクタとも呼ばれています。リレーの長所であるコンパクトなサイズ感はそのままに、コンタクタの開閉領域である高容量の通電・遮断が可能です。また、ハーメチックタイプ(ガス封止タイプ)は堅牢な密閉構造を有しており、通常のリレーよりもガスや粉塵などの耐環境性に優れています。また、電磁石(駆動部)の小型化により動作音を抑制しています。
オムロンは、お客様のニーズに合わせた幅広い容量帯でのDCパワーリレーを取り揃えております。コンタクタとリレーのメリットを掛け合わせたDCパワーリレーでお客様の課題を解決します。

オムロンのパワーリレーラインアップ

2023年12月時点

コンパクトなリレーサイズでコンタクタ領域の
大電流遮断を実現したDCパワーリレーとは

オムロンは、コンタクタの領域であるDC400V 500Aの大電流&高電圧遮断性能を、コンパクトなリレーで実現したG9EKを発売しました。G9EKは、バッテリなどの大電流通電のアプリケーションで必要不可欠な高短絡性能に加え、モビリティなどの動くアプリケーションに対して有効な、高い振動・衝撃性能も有した多機能なリレーです。

DC400V/500Aの大電流&高電圧を遮断

コンタクタに比べて圧倒的な小型サイズ

5000Aの大電流が流れても耐えきる高い短絡性能

車の衝突と同等の振動衝撃に耐性あり

G9EKで広がるアプリケーション

マルチ機能を有したG9EKは、さまざまなアプリケーションにご使用いただけます。
コンパクトで高性能なG9EKをぜひ試してみてください。
形G9EK製品紹介ページはこちら

車載用途にご検討の方は、車載用リレー車載用スイッチのWEBページをご参照ください。

これらのアプリケーション回路の
高電圧・大電流遮断用途でG9EKは活躍します。

例)モビリティの場合:DC絶縁・安全遮断

例)ESSの場合:DC安全遮断


安定供給を目指したガスなし構造リレーサイズでコンタクタ領域の大電流DC500A遮断を実現 安定供給を目指したガスなし構造リレーサイズでコンタクタ領域の大電流DC500A遮断を実現

大電流DC500A遮断

大電流を遮断できるDCリレーを実現する難しさは、どのように発生したアークを遮断できるかにあります。リレーが回路をオフにするとき、接点の間にはアークと呼ばれる数千℃の火花が発生します。アークは電流・電圧が大きくなるほど発生しやすくなります。
そこで、従来はアークを素早く冷やす特性を持った水素ガスを閉じ込めた堅牢なリレー構造をとることで、コンパクトなサイズでの大電流遮断を実現してきました。しかし、小さなサイズでコンタクタ領域の大電流開閉が可能という大きなメリットを持つ反面、部品の内部にガスを閉じ込めるという特性上、製造には特殊な部材や工程が必要となります。特殊な部材を大量に、かつ安定して入手することは難しく、安定した供給や大量生産に対応できない、価格が高くなってしまうという課題を抱えていました。さらに、数十年以上ガス漏れやガス劣化しない堅牢なリレーが必要となるため、構造が複雑で高価なリレーになりがちでした。今後、需要が高くなるバッテリ(蓄電)分野において、ガスの力を借りることなくコンパクトなサイズ感で大電流の遮断ができるリレーが今、求められています。

アークとは

リレーが回路をオフにするとき、接点の間に発生する約数千℃にも及ぶ火花のことです。

従来のリレー構造

不活性ガスによるアーク冷却

接点部分に加圧した熱伝導率の高いガスが封入されています。ガスがアークの熱を奪うことで素早く冷却・遮断することができます。

セラミック筐体による封止構造

セラミックで覆われた長期的にガスの漏れない・劣化しにくい構造が必要となるため、見た目も堅牢でサイズも大きくなります。ガス漏れを防ぐための特殊な部品や生産工程、密閉性を担保するための特殊な検査なども必要となるため、高価になりがちです。

G9EKは、複数のアーク遮断要素を組み合わせることで、気中開閉でコンタクタクラスの500Aの大電流遮断を実現しています。特殊部材や特殊工程をすべて取り除いた構造設計により、これからどんどん拡大していくバッテリ市場において、安定した製品供給を実現します。

ケーブルを変えることで最大200Aまでの通電が可能 ケーブルを変えることで
最大200Aまでの通電が可能

G9EKはガスレスで定格負荷DC500V 120Aでの高容量開閉が可能です。100A以上の大電流を安定してシステムに通電するために、G9EKの端子は広面積な板形状(バー端子)を採用しています。接続するバスバー(コネクタケーブル)を太くすることで、放熱性が向上し、定格値120Aよりもさらに大きな電流を通電することが可能です。

30mm2の太さのバスバーをご使用いただくと、120Aの通電が可能ですが、100mm2の太さのバスバーをご使用いただくと、200Aまでの通電が可能となります。(実力値)

2個直列接続で500V以上の高電圧を遮断

充電時間を短くしたい、ハーネス(ケーブル)を細くしたい、または出力を上げたい場合、バッテリ(電源)の電圧を高くする必要があります。G9EKを2個直列に接続することで、リレー1個では遮断できないDC500V以上の高電圧を遮断することが可能になります。

G9EKを1個使用した場合

DC500Vの遮断が可能

G9EKを2個直列に使用した場合

リレーそれぞれにDC500Vずつ、計DC1000Vまでの遮断が可能

2個並列接続で1000Aの大電流を遮断

出力は負荷電流を大きくすることでも上げることが可能です。
G9EKを2個並列に接続することで、リレー1個では遮断できない500A以上の大電流を遮断することが可能になります。

G9EKを1個使用した場合

DC500Aの遮断が可能

G9EKを2個並列に使用した場合

リレーそれぞれに500Aずつ、計1000Aの遮断が可能。短絡電流にも強くなります。

バッテリなどの高電圧を扱うアプリケーションで使用されるG9EKは、絶縁規格IEC60664-1(汚染度Ⅱ)を満足しています。接点間電圧を定格値のDC500Vの倍、DC1000Vに耐えられる絶縁設計をおこなうことで、DC500V以上の高電圧アプリケーションにも対応可能です。

遮断容量が500Aクラスのコンタクタに比べて圧倒的にコンパクト 遮断容量が500Aクラスのコンタクタに比べて圧倒的にコンパクト

G9EKのような500Aクラスの高容量領域では、主にコンタクタが採用されています。一般的に、コンタクタが求められるような大電流の領域では、基板に実装できるリレーは存在せず、基板外にねじ止めで設置するタイプが一般的です。そのため、大電流対応のコンタクタやリレーでは、部品本体のサイズをどれだけ小さくできるかが、省スペース化のカギとなります。
しかし、コンタクタはガス封止リレーのようなアークを遮断する特殊な構造を有していない気中開閉(ガスなし)タイプです。そのため、どうしてもサイズが大きくなってしまうという課題がありました。
G9EKは、コンパクトなサイズ感はそのままに、500Aの大電流開閉を実現しています。同容量帯のコンタクタと比較しても80%小さく、お客様のアプリケーションの小型化に貢献します。
80%サイズダウン!

充電・放電の双方向に対応で
機器のサイズダウンにも貢献

G9EKは、充電と放電の双方向に対応しています。極性のあるリレーの場合、充電用と放電用にそれぞれリレーを並列に接続する必要がありますが、G9EKであれば1個で充電と放電に対応可能です。そのため、搭載面積を約50%以上削減し、機器の小型化に貢献します。

極性あり(片側方向のみ対応)のリレーの場合

極性のないリレーの場合、充電/放電システムではリレーを2つ+ダイオードを2つ使って並列に接続する必要がある

極性なし(双方向開閉に対応)のリレーの場合

搭載面積約50%以上削減

G9EKは1個で充電と放電の双方向開閉が可能

通電側に極性がある場合

また、大電流通電・遮断用途で使用されるコンタクタやDCパワーリレーは、基板の外側にねじ止めで搭載されることが一般的です。片側のみにコネクタ部があり、この部分をリレー駆動用回路に接続しますが、通電側に極性がある場合、充電か放電かで取付方向が変わるため、設計時にリレーの取り付け方向の検討が必要となります。G9EKは、充電と放電の双方向に対応が可能なため、取り付け方向を気にする必要がなく、スペース設計自由度の向上に貢献します。取付方向の制約により、無理な配線の引き回しや、無駄なスペースをつくることがなく、シンプルな構造設計を実現できるため、機器の小型化にも役立ちます。

極性あり(片方向)

端子に極性があるため、コネクタの方向が決まってしまい、
使用機器によっては、配線のためのスペースが必要となる。

極性なし(双方向開閉)

極性が無いため、使用機器に合わせて、コネクタの方向を決定できる。

※2024年11月当社調べ

5000Aの大電流が流れても耐えきる高い短絡性能 5000Aの大電流が流れても耐えきる高い短絡性能

リレーの短絡性能とは、故障などで回路に短絡が発生した場合に、どの程度の電流を制御できるかを指します。
高容量バッテリは大量の電力を蓄えており、短絡が発生するとその電力が瞬時に放出されます。この結果、非常に高い電流が瞬間的に流れることになります。大電流は発熱や火災の原因となるだけでなく、電気機器や回路の損傷を引き起こす可能性もあります。短絡時の電流は、数千A~2万Aにものぼると想定され、電気回路や接続されている電装品を保護し、加熱や発火などを防ぐ保安部品(ヒューズなど)も含めシステムとして安全を確保する必要があります。保安部品によって安全が確実に確保できるまでの間、大電流に耐えうるだけの短絡性能がリレーに求められます。

G9EKは5000A 5ms以上の大電流に耐えきる、非常に高い短絡性能を有しています。これは、10~20kWhクラスのリチウムイオンバッテリを使用するアプリケーションの異常時の短絡(ショート)に耐えるレベルです。

短絡時の電流例

接点面に発生する電磁反発力

短絡電流は短時間(~1ms)に数千Aまで急峻な立上りで流れます。大きな電流が流れると、通電部の周囲に強力な磁界が発生し、電流が磁界から受ける力(ローレンツ力)が接点が離れる方向に働きます。この現象を「電磁反発」と呼びます。大きな電流に耐えるには、発生するローレンツ力よりもさらに強い力で接点を押し込む構造が必要となります。高容量のバッテリになるほど短絡電流も大きくなり、電磁反発力も大きくなるため、設計難易度も劇的に高くなっていきます。

G9EKは、端子から発生する磁界の影響を最小限にする端子構造をすることで短絡電流によるローレンツ力の影響を最小限に抑えています。
技術の工夫

従来の端子構造

コの字型に電流が流れることで、磁界が中央に集中して発生する。結果、ローレンツ力(電流が磁界から受ける力)が下向きにかかり、接点接触部が離れやすくなる。

G9EKの端子構造

電流がほぼ横方向に流れる構造設計により、磁界の発生方向も分散している。結果、接点周辺に発生する磁界が小さくなり、接点を引き離す方向に働くローレンツ力が小さくなる。

従来の構造と比較した場合、接点が離れる方向に作用するローレンツ力の小さなG9EKは、可動板を接点に押し付けるコイルの力が小さくてすむため、コイルの消費電力を20~30%抑えることが可能です。

接点(可動板)に発生する電磁反発力の比較

車の大衝突レベルの激しい衝撃にも耐えられる超耐振動衝撃性能 車の大衝突レベルの激しい衝撃にも耐えられる超耐振動衝撃性能

車にも使用されているG9EKは、耐振動衝撃性にも抜群に優れており、最大100Gの振動衝撃に耐えることが出来ます。技術の進歩に比例して、電気自動車や電動ロボット、電動スクーターなど、バッテリ駆動の「動く」アプリケーションはどんどん増えてきています。 これらの機器では、振動や衝撃ですぐに壊れてしまうような部品は使用できません。

モビリティ分野の代表例である電気自動車や電動バイクなどのモビリティは、加速時や急速充電時に大量の電力(大電流)を必要とします。また多くのバッテリ駆動機器にはモータが搭載されており、モータがより強力に回転するためには、大電流が必要となります。そのため、電気自動車や電動バイクに安全遮断用途で内蔵されているリレーにも高容量(大電流)が求められています。
高容量と耐衝撃性能の両方を
兼ね備えたG9EKを試してみませんか?
モビリティにおすすめの
製品紹介ページはこちら
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100Gの衝撃はどのくらい?


一般車両の衝突は60Gクラス

※イメージです。

G9EKは100Gの耐衝撃性能
F1カーが衝突するレベルの衝撃でも耐える!

※イメージです。

G9EKがON/OFF時の衝撃性能は?

G9EKが ON時の耐衝撃性能

左図は、G9EKが通電時、例えばモビリティが動いている時に、「どのくらいの衝撃力までであれば、接点が離れず安定して通電をおこなえるか」を表しています。
G9EKは、上下左右どの方向からの振動・衝撃であっても100Gの衝撃力まで対応することが可能です。100GはF1が衝突するレベルの衝撃です。

G9EKが OFF時の耐衝撃性能

接点が離れている時、接点が開閉する方向からの衝撃は10Gレベルまで耐えられる。例:時速60kmの車が壁に衝突する衝撃に近いレベル※イメージです。
G9EKがOFFしている状態、例えばモビリティが動いていない時、G9EKの端子と接点は離れています。上図は、G9EKがZ→Z’の衝撃に対しては、10Gを超えると端子と接点がくっつきONしてしまいやすいことを表しています。しかし、アプリケーションが動作していない時に衝撃や振動が起こるリスクは限りなく低いです。12Gで時速60kmの車が壁に衝突する衝撃に耐えられるレベルといわれており、G9EKはOFF時であっても高い耐衝撃性能を有しています。
技術の工夫

従来のリレーヒンジ形

ヒンジ形は接点可動部を線で支えている状態。バネの力で横方向に押し付けているだけの構造になるので、規定以上の衝撃で動く。

G9EKの採用構造プランジャ形

プランジャ形は、T字に設計された接点可動部により、接点の可動方向である上下以外の、左右・手前・奥からの振動の影響はほぼ受けない。それに加えて、ソレノイド採用したコイルにより、磁力を強めることで、接点間の接圧を強め更に振動に強い構造を作り出している。


開発者インタビュー 開発者インタビュー

ガスの力に頼り切っていた、
今までのノウハウだけでは実現できない500A遮断の壁

アークが頻発するDC400V 500Aという超高容量帯で、ガスに全く頼ることなく、従来のガス封止型リレーと同じサイズで、ガス封止型リレー同等の直流開閉を実現することは、想像を絶する難しさでした。ガスをなくすことで一番懸念される課題がアークの遮断能力でした。直流(DC)の大電流の遮断は交流(AC)の大電流を遮断するよりも数段難易度が上がります。電流の流れる方向が変わる交流回路では、電流がゼロになった瞬間にアークが消滅します。しかし、直流回路では、流れる方向が一定のままなのでアークが消滅せず、リレーが強制的にアークを遮断させなければなりません。
高容量リレーに精通した技術者を集め、原理試作の制作・試験を日々繰り返し、アークの挙動データを地道に収集し、考察していきました。過去に、形G9EJというDC400V 25Aのガスなしリレーを開発した経験はあるものの、
今回挑むのはDC400V 500Aのガスなしリレーです。「限られた空間で、高容量の電圧・電流をどう遮断すればよいのか」、知見もなく、イメージすら湧かない状態でした。検討は困難を極め、時間だけがどんどん過ぎていきました。

高容量&小型サイズで気中開閉(ガスレス)を実現しようとすると…

特に、ガスに頼らない構造設計過程で、再点弧とアークの膠着が何度も発生し、我々を悩ませました。
アークの再点弧現象については、空間の活用が有効であることは過去の経験則でわかってはいるものの、正確にどのくらいの空間が必要なのかのデータは全くない状態でした。今まではアークの遮断性はガスの力に頼ってしまっていたので、アークを引き延ばすための緻密な空間設計を検討する必要はありませんでした。しかし重要なのは、「サイズが従来のガス封止型のリレーと同じであること」です。高容量を実現できたとしても、サイズが大きくなってしまうのであれば、お客様にメリットは感じていただけません。
アーク膠着についても、何が起因で発生しているのかの要因を突き止めるところから始める必要がありました。
何度も心が折れそうになりました。しかし、ここであきらめる訳にはいきませんでした。次世代のDCパワーリレーとして、ガスレス遮断技術を構築し、カーボンニュートラルの世界創造に貢献できる、供給力に優れた商品を作るいう強い意志を支えに、毎朝一番に、様々な知見を持ち合わせた技術者が集まり多面的なディスカッションを繰り返しました。そして、ありとあらゆる遮断方法の可能性をすべて試し、どのような要素やアプローチがアーク遮断に効果的なのかを地道に見極めていきました。毎日試作モデルを作りながら数年の月日を要し、様々な検討と試行錯誤を繰り返し行った結果、磁石でのアーク遮断に加え、今までにない設計要素を新たに入れ込むことで、遂にDC400V/500Aの大電流遮断をガスなしで実現することに成功したのです。
事業統括本部 商品開発統括部
ファインメカ開発1部 高容量RY開発グループ
川口 直樹
事業統括本部 商品開発統括部
ファインメカ開発1部 高容量RY開発グループ
川口 直樹
開発者インタビュー 開発者インタビュー

オムロンが生み出したDCパワーリレーの新構造

CAE解析を駆使し、オムロン独自の遮断技術にて、大電流/高電圧の気中開閉を実現。双方向開閉を可能にする磁束設計、(NEW)接点形状の最適化、(NEW)アーク遮断経路の最適化※特許取得済、(NEW)アーク遮断空間容量の最適化※特許取得済、(NEW)アーク短絡/再点弧防止設計※特許取得済。どれかひとつでは実現しない複数のアーク遮断要素を組み合わせた今までにない構造設計
※掲載している内容は技術の一部です。
事業統括本部 商品開発統括部
モビリティ開発部 商品技術グループ
小川 真一
事業統括本部 商品開発統括部
モビリティ開発部 商品技術グループ
小川 真一
500Aの遮断をガスの力に頼らず実現するには、従来の最適な磁石と磁力の検討に加え、新しい遮断要素が必要不可欠でした。
オムロン独自のCAE解析技術を活用し、アークが遮断時にどう動くのかをシミュレーションで確認し、小さい空間を最大限に活用してアークを引き延ばす距離を稼ぐような構造上の工夫を設計に組み込みました。加えて、アークのシミュレーションで想定した動きを実際にしているかどうかを、電磁石を用いて実際に確認し、必要な空間距離や、アークの合流/再点弧を防ぐような細部の構造設計を調整していきました。接点部に関しても、形状の工夫により、大電流遮断に優位になるようになっています。
このような、遮断に優位な構造が、G9EKの設計には、多数組み込まれています。
開発者インタビュー 開発者インタビュー

理想の設計 vs 量産できる構造

「設計構造のどれをとっても新しい」形G9EKは、設計要素を製品に落とし込んだ後も課題だらけでした。
設計上の理想形状はあるものの、複雑な形状や厳しい公差設定を量産で再現することは困難です。生産ラインで組み立て、品質を担保しつつ量産を実現させることのできる部品形状へとすり合わせが必要でした。ガスを必要としないことで、ガスを封入するために必要な大型の設備は必要なくなり、製品自体の構造もシンプルになっている一方で、ほぼすべての構造が新しい部品形状のため、今までの生産工法も通用しません。製品を生産ラインで組み上げても、試作段階で分からなかった組み立て時の不具合が起きたり、品質を担保する各スペックの工程能力を満足させることができないなど、品質が安定しなかったので様々な調整が必要でした。遮断や短絡性能など、製品の要となる部分は最新の注意を払いながら設計を重ねていたのでおおむね予想通りの結果が得られるのですが、想定もしていないようなところからエラーが起こるんです。1つエラーをつぶしても、別のところからエラーがまた出てくる。一発で改善できず、もぐらたたき状態でした。しかし、技術検討段階でかなりの時間を要したため、ここで時間をかけるわけにはいきませんでした。とにかく、限られた時間の中で、トライ&エラーをガンガンまわしていきました。
開発者インタビュー 開発者インタビュー

電子部品でも社会課題に挑戦できる

形G9EKの開発は、オムロンのプランジャ形のDCパワーリレーでは初となる、ガスレス仕様という事で、既製品から一新された、非常に難易度の高いプロジェクトとなりました。そのため、技術開発、商品設計、商品化の流れの中で、多種多様なエキスパートが携わりました。
商品化までの道のりは、決してスムーズでは無く、幾度となく壁にぶち当たり、私自身、心が折れそうになることが何度もありました。しかし、携わったメンバ全員で1枚ずつ壁を打ち破り、形G9EKを世に出す事が出来ました。
今後、カーボンニュートラルの実現に対する取り組みは世界で加速していくと考えます。形G9EKは、従来の大電流遮断構造において必要不可欠だった特殊部材と特殊工程を完全に排除した事で、電動モビリティ、電力供給装置、蓄電池設備などのさまざまなアプリケーションに対して、安定した供給を可能にしました。また、生産過程で発生する消費電力を抑えたクリーンな商品でもあります。
私は約10年間、オムロンでDCパワーリレーに携わってきましたが、形G9EKは、今までで最も難易度が高く苦労した商品であると同時に、最も思い入れのある商品でもあります。形G9EKの開発を進めていく中で、電子部品事業をおこなっている私たちでも、提供する商品のカーボンニュートラルを推進する事で、社会課題の解決に貢献できるという実感が膨らんでいきました。今振り返ると、使命感のような強い想いに支えられて、皆が一つになってがむしゃらに商品化まで突き進んできた数年間だったように思います。
カーボンニュートラルの世界を創るために、私たちの想いが詰まった形G9EKを世界中に届けていければと思ってます。

現在、リレーに対する要求スペックは上がってきており、それに対応するため、私たちは、より高電流・高電圧に対DCパワーリレーの開発を進めています。難易度が高いプロジェクトになりますが、開発上流からあらゆる分野のメンバーを巻き込んだ、コンカレント開発をおこなう事で、組織全体で新商品を作り上げていく取り組みを実施しています。形G9EKで得た技術と経験を活かしながら、新たな価値の創造をスピーディに実施することで、社会のニーズに柔軟に対応していきたいと思ってます。今後もオムロンのDCパワーリレーにご期待ください。
モビリティ開発部
DCパワーリレーチーム
モビリティ開発部
DCパワーリレーチーム

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車載用途にご検討の方は、車載用リレー車載用スイッチのWEBページをご参照ください。

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