蓄電システムにおける突入電流防止回路にはこのリレー

オムロン株式会社 電子部品事業部は、全国6か所に点在していた電子部品の全開発拠点を2022年12月に岡山事業所に結集させました。各事業の強みを活かした総合技術力と開発力で、お客様と共に新たな価値を創造していきます。
開発拠点統合の狙いについて、当プロジェクトを推進してきた商品開発統括部の3人のマネージャにインタビューしました。

商品開発統括部 統括部長 辻本 正治
商品開発統括部 統括部長 辻本 正治
商品開発統括部
モジュール開発部 部長
中川 伸二
商品開発統括部
モジュール開発部 部長
中川 伸二
商品開発統括部
ファインメカ開発1部 部長
新名 正照
商品開発統括部
ファインメカ開発1部 部長
新名 正照

電子部品事業部の持つすべての技術が今、結集する

なぜ、岡山事業所に開発人員を結集したのでしょうか?

なぜ、岡山事業所に開発人員を結集したのでしょうか?

辻本

辻本

各拠点に点在する技術を岡山にすべて集めることで、オムロンの電子部品事業が保有する技術を最大限に活用し、社会課題解決に貢献できる商品をお客様と共に創っていくための体制づくりが狙いです。スピーディに新たな価値を創出していくために、コンカレント開発を強化・実践していきます。

中川

中川

我々がお客様に展開する商品は、リレー、コネクタ、スイッチ、センサ、モジュールと多岐に渡ります。今までは、各々が「Q(Quality)C(Cost)D(Delivery)」を意識した製品で成長を遂げてきました。しかし、いくら個々の技術力が高くても、電子部品単体で実現できるソリューションには限界がありますし、大きな社会課題に立ち向かうことはできません。部品単体での勝負に加え、それぞれの電子部品分野に特化した技術者の多彩な知識や技術を結集させ、掛け合わせていくことで、新たな化学反応が起こることに期待しています。

技術力を岡山に結集させて、
新しい価値を生み出せるのでしょうか?

技術力を岡山に結集させて、新しい価値を
生み出せるのでしょうか

中川

中川

今まで、リレー、スイッチ、コネクタ、センサ、モジュールで開発拠点が異なっていたこともあり、各電子部品事業が独立して事業を推し進めてきました。当然ながら、それぞれの拠点で醸成されてきた、風土・仕組み・価値感・技術者のメンタリティは様々ですし、「多様性」が混ざり合い、一丸となって新しい価値を目指していくには時間がかかります。

新名

新名

コロナ禍以降、リモートワークの環境が整ってきている中で、「拠点が点在したままでも専門分野の枠を超えたコンカレント開発は可能なのでは?」という意見も当然ありました。しかし、やはり、リアルにコミュニケーションが取れるメリットは大きいと感じています。どうしても離れていると、役割を分担しながらの個人ワークが多くなってしまい、会議も進捗の確認作業や表面的な議論になりがちです。実際にモノを見て、「今誰が何をやっているのか」「どんなものを作ろうとしているのか」を理解しながら議論を重ねていくことで、出来る議論の深さも全然変わってくると思っています。

中川

中川

技術者は知的好奇心の塊ですから、新しい技術や新しいテーマに関する感度も高いですからね。しかし、リレーをやってきた技術者はリレー、センサをやってきた技術者はセンサ、というように、どうしても担当する商品の枠の中で考えようとしてしまいがちです。各電子部品事業の拠点が離れていたこともあって、自身の拠点以外が保有している技術やノウハウを知る機会もあまりない状態でした。岡山にすべての技術者が集まることで、他の拠点の商品や技術が自然に目に入ったり、物理的に人が交わる機会が増えるようになりました。直接「見る」ことで新しいひらめきが、直接「交わる」ことで技術が繋がり新しい価値が生まれることに期待しています。

新名

新名

もちろん岡山に結集したことで、生産と開発部隊が離れてしまうなど、開発を進めていく上での難しさは当然出てくると思います。しかし、「お客様の課題解決にフォーカスする」ことを最優先に考えた体制が今回の岡山結集ですから。お互いにしっかりと情報提供・連携できる体制を敷いていくことで、距離を感じさせないスムーズな商品立ち上げに繋げていきたいと思っています。

人が交わり技術がつながる、そして新しい価値が生まれる

技術の融合を加速させるための施策について教えてください。

技術の融合を加速させるための施策について教えてください。

現段階では、技術者を同じ拠点に技術を結集しただけ、まだまだスタートラインです。今後、結集した技術力をどのように繋げていくのかという仕掛け作りが重要になってくると思っています。新しい価値を模索していく中で、多様な部品事業のエキスパートが交わり、共に解決していこうとする風土を醸成していくべく、技術者同士をつなげる取り組みも開始しています。


技術の展示会

新名

新名

各々の商品と技術を知るための場として、3か月に1度、技術の展示会を開催しています。今あるサンプルや資料などを活用することで、手間暇かけずに開催し、技術者同士のコミュニケーションの機会を増やすきっかけの1つとして活用しています。

2023年7月の展示会 ※ 27テーマが展示されました。

開発する上での悩み事などを一緒に共有することで、技術者同士のコミュニケーションから生まれる新たな気づきなどの誘発にも繋げています。


技術者のリアルな声
様々な分野の知見者から意見やアドバイスをもらえ、新しい発想が得られる場として活用していきたいですね。普段忙しいので、大がかりな準備も不要で、手軽に楽しく参加できるのが嬉しいポイントです。
モジュール開発部
デバイス・コンポ開発グループ
森澤 達英
技術者のリアルな声
様々な分野の知見者から意見やアドバイスをもらえ、新しい発想が得られる場として活用していきたいですね。普段忙しいので、大がかりな準備も不要で、手軽に楽しく参加できるのが嬉しいポイントです。
モジュール開発部
デバイス・コンポ開発グループ
森澤 達英

アプリのティアダウン

辻本

辻本

DMSが注力しているDCインフラ、DCドライブ、高周波の領域で、今後伸長しそうなアプリケーションを購入・分解し、理解を深めるための取り組みです。分解したアプリケーションに対して、我々がどのような価値を提供できるのかを考える場を作るとともに、様々な分野の技術者が交流できる場としています。
実際に分解したアプリケーションは、フロアに展示をして、参加できなかった他のメンバも後からじっくりとアプリ構造を確認できるようにしています。

電動キックボードのティアダウン

実際に乗ってみる

実際に分解してみる


技術者のリアルな声
注力領域の1つである電動キックボードの試乗会からティアダウンまで行いました。実際に試乗することで参加者同士で使用感を確認し、新たなコミュニケーションを産み出せました。多角的な意見の取り込みを意識し、分解・解体作業時にマーケティング部門の方々を招待したり、当日参加できなかったメンバー向けにも、ティアダウンした電動キックボードをしばらく展示するなどして、様々な新しいアイデアを生み出すきっかけに繋がりました。これからも現物に触れる機会を大切にしたいです。
技術統括部
材料技術グループ
山本 晃嗣
技術者のリアルな声
注力領域の1つである電動キックボードの試乗会からティアダウンまで行いました。実際に試乗することで参加者同士で使用感を確認し、新たなコミュニケーションを産み出せました。多角的な意見の取り込みを意識し、分解・解体作業時にマーケティング部門の方々を招待したり、当日参加できなかったメンバー向けにも、ティアダウンした電動キックボードをしばらく展示するなどして、様々な新しいアイデアを生み出すきっかけに繋がりました。これからも現物に触れる機会を大切にしたいです。
技術統括部
材料技術グループ
山本 晃嗣

技術くらぶ

辻本

辻本

これからスタートする取り組みではありますが、共通の関心事を持ったメンバが、「技術を使った遊び」を通じて学べるような、会社のくらぶ活動を導入しました。いつも関わりを持っているメンバだけでなく、他分野のメンバを巻き込む形で、楽しく学べる場をつくります。遊び心から生まれる発想も技術者には大切だと思います。少し仕事とは距離を置いて、色々な技術に興味を持った各分野のエキスパート達が、教えあったり、影響しあったりしながら、人間関係を築いていける場にしてほしいと思っています。すでに電界結合方式やChatGPTを学ぶなど、4件のクラブ活動がエントリーされています。こういった取り組みが、新たな人間関係の繋がりだけではなく、新たな技術や開発テーマに繋がっていくことに期待しています。

開発商品の展示

中川

中川

岡山拠点には、とにかく色々なところに開発製品の現物が展示されています。我々はみなエンジニアなので、会議室の待ち時間に、廊下に現物が置いてあったりすると、気になって手に取って見たりするんですよね。「この構造使えそうだな」とか、「もっと詳細が知りたい」と思ったときに問い合わせ先も書いてあるので、そこで人や技術のつながりが生まれるような、日常的な仕掛けも取り入れています。

技術者が交わる協創スペース

新名

新名

技術者同士が交わりやすい空間づくりにも力を入れています。広い空間に椅子や机を様々なレイアウトで配置しています。ちょっと話したいときに気軽に使用できますし、オープンな空間で誰が何をしているのか見えるので、声もかけやすいと思います。知っている人が何かしていると、気になって近づいて会話が生まれることもよくありますしね。

技術者のリアルな声
居心地のよい空間や業務効率の良い作業スペースは個人やチーム、テーマ、あるいは、開発ステージなどによってさまざまです。一人で籠って、ワイガヤで、少人数で、大勢で、リモートで、デジタルで、白板で、紙で、腰を据えて、短時間で、靴を脱いで、などなど、そんな多様性を受け止められる空間を目指しました。結果、人が自然に集まり、ここに来れば誰かがいて会話が、相談が、おせっかいが生まれる。ここから何かが始められるような空間になっていけばいいなと思います。
協創スペース制作担当
モビリティ開発部 商品開発G
米原 博人
技術者のリアルな声
居心地のよい空間や業務効率の良い作業スペースは個人やチーム、テーマ、あるいは、開発ステージなどによってさまざまです。一人で籠って、ワイガヤで、少人数で、大勢で、リモートで、デジタルで、白板で、紙で、腰を据えて、短時間で、靴を脱いで、などなど、そんな多様性を受け止められる空間を目指しました。結果、人が自然に集まり、ここに来れば誰かがいて会話が、相談が、おせっかいが生まれる。ここから何かが始められるような空間になっていけばいいなと思います。
協創スペース制作担当
モビリティ開発部 商品開発G
米原 博人

お客様と“共に創る”

オムロンが目指すお客様との「共創」とはどういったものでしょうか?

オムロンが目指すお客様との「共創」とはどういったものでしょうか?

「What to solve」― まずはお客様の困り事を知ること

中川

我々は電子部品メーカであり、お客様の製品を通じて新たな価値を創造していかなくてはなりません。
当たり前ですが、今ない新しい価値を創るということは簡単にできることではありません。新しい価値のひらめきは、「What to solve」、お客様が今何に困られているのかをしっかりと知ることで生まれます。そのために、いかに積極的にお客様とのコミュニケーションの場を作っていけるのかがカギとなります。

新名

お客様と今まで以上にしっかりとコミュニケーションを築いていくことで、いち早く「今解くべき課題」を見出し、スピード感を持って解決できる商品を生み出していくというサイクルを作っていきたいですね。お客様との関わりの中で見えてくる本質課題は、同業界内での共通課題だと捉えています。点ではなく面で、業界全体の課題としてお客様と一緒に社会課題を解いていくような「共創」の在り方を実現していけたらと思います。

「How to solve」 ― 次にどうやって課題を解くか

中川

解くべき社会課題を留めたら、次に「How to solve」、どうやって課題を解いていくのかが重要です。我々の保有する技術の掛け算で、世にない新しい商品を生み出していくのも一手ですし、まだ我々だけの力では解決できない社会課題もあります。お客様とコラボレーションして解決していく、または我々の保有していない未知の技術との共創もあるかもしれないですよね。

新名

お客様と共に顧客価値を具現化していくためには、お客様に我々が保有する多様な技術に価値を見出していただく、一緒に価値を具現化したいと思っていただくことが重要だと思っています。
以前は開発拠点が分かれていましたが、これではお客様も部品単体レベルでの相談しかできず、せっかく課題を教えていただけても、各分野の技術者が勢揃いでお客様のご相談に柔軟に応じることはできません。
今回岡山に技術を結集させたことで、お客様の課題に寄り添った提案ができるようになりました。最近では、実際の試作品を見ながらお客様と複数の開発部門を交えて議論したり、リモート会議でも臨機応変に知見のあるメンバーを招集するなど、よりお客様との距離感が近づき、課題解決に向けた多角的かつ深い議論ができるようになったと感じます。

お客様との共創スペース

新名

お客様に興味を持っていただく、一緒に社会課題を解決していきたいと思っていただくために、岡山に訪れるメリットを感じていただけるような拠点づくりを目指していきたいですね。そのためには、岡山拠点でしかお見せすることができない技術詳細の公開や、さまざまな技術者が揃っているからこそできる多面的でリアルなディスカッションをお客様としっかり行っていけたらと思っています。例えば、お客様が製作しようとされているアプリケーションの課題感をある程度想定して、オムロン側から能動的な提案を行い、基盤となる技術の部分を実際にみていただくなどですね。お客様に「来て良かった」「オムロンさんと一緒に仕事がしたい」と感じてもらえるような体制を確立していきます。
お客様と未来の価値創りについて積極的にディスカッションできる、この岡山事業所をそういう未来の価値づくりの起点にしていけたらと思っています。

新名

お客様に興味を持っていただく、一緒に社会課題を解決していきたいと思っていただくために。お客様にも岡山に訪れる価値を感じていただけるような拠点づくりを目指していきたいですね。そのためには、岡山拠点だからこそお見せできる技術力を公開し、さまざまな技術者が揃っているからこそできる多面的でリアルなディスカッションをお客様としっかり行っていけたらと思っています。例えば、お客様がつくろうとされているアプリケーションの課題感をある程度想定して、我々部品事業ができる提案し、基盤となる技術の部分を実際にみていただくなども出来ればよいなと思っています。お客様に「来て良かった」「オムロンさんと一緒に仕事がしたい」と感じてもらえるような体制を確立していきます。

お客様と未来の価値創りについて積極的にディスカッションできる、この岡山事業所をそういう未来の価値づくりの起点にしていけたらと思っています。

オムロンの価値づくりとは

技術のハイブリッド&コンカレント開発が生み出す
新たなソリューション提案の実績はあるのでしょうか?

技術のハイブリッド&コンカレント開発が生み出す
新たなソリューション提案の実績はあるのでしょうか?

リレーのモジュール化で漏れ電流を極小化

半導体検査装置には、半導体リレーが約1,000~20,000個使用されています。半導体検査では高い測定精度を求められるため、リレーの漏れ電流をいかに低減するかがお客様の課題でした。
リレーの枠を超え、新たなモジュール工法を開発し、品質部門・生産部門が一丸となってコンカレント開発を進めていくことで、1pA以下の漏れ電流を実現したリレーモジュールを、お米3粒分の極小サイズで完成させました。

スイッチとセンサの融合で
「すべての人に優しい」を実現

新型コロナウイルスが世界的なパンデミックとなり、感染への不安から直接「さわる」という行為に抵抗を感じる人々が激増しました。
「非接触」の需要が高まり、エレベータではセンサを活用した「タッチレス操作」が増えていきましたが、一方で目の不自由な方など、押しボタンが必要な方もいらっしゃいます。
オムロンは「すべての人に優しい」を実現するために、スイッチ技術とセンサ技術を融合させた、スイッチとセンサ一体型のエレベータスイッチをお客様と共に開発しました。

組み込み技術の結集で、お客様と一緒に
気候変動と災害リスクに立ち向かう

異常気象をはじめとした気候変動や災害リスクが様々なビジネスシーンで顕在化しています。
従来よりも微細な気象観測データをとりいれ、ビジネス現場での気象予測精度をあげることで、リスク軽減やサービスの付加価値をあげたいというニーズが増えています。
オムロンはそのようなニーズに応えるべく、温度・湿度・気圧などの様々なセンシングデバイスと、独自のアルゴリズム・通信技術を融合させた気象センサをお客様と共にたった15か月という期間で開発しました。

さいごに

私たちが為すべきことは、社会に貢献することです。お客様の課題解決につながる商品を、しっかりと提供していくことによって、その結果、私たちの成長に繋がっていくという姿を目指したいと思っています。
電子部品事業部(DMS)には「社会のために何ができるのか」を社員みんなで考え、議論し、自らで作っていく風土・チャレンジできるフィールドがあります。「お客様の課題を解決したい」という強い想いがあるからこそ、どんなに開発の壁が高くても諦めない原動力につながるのだと思います。しかし、私たちだけでは実現することは出来ません。だからこそ、お客様と積極的につながり、本音で話し合う場を、この岡山事業所を通じて作っていくことで、新たな価値創出につなげていきたいと思っています。
商品開発統括部 統括部長
辻本 正治
商品開発統括部 統括部長
辻本 正治
商品開発統括部
モジュール開発部 部長
中川 伸二
商品開発統括部
モジュール開発部 部長
中川 伸二
様々な技術力の化学反応で生まれる価値創造の取り組みを、技術者として、そして組織を預かるマネージャーとして、とても楽しみにしています。
水と油は何もしなければ絶対に混ざり合いません。開発テーマを分担して割り振るだけでなく、様々な技術畑のメンバが1つのチームとして一緒に議論できるように、「振ってみる」、「かき混ぜてみる」などの仕掛けをマネジメントとして意識して取り組みたいと思います。
時間がかかる取り組みだと思いますが、「数年後には半分のテーマが様々な技術の掛け合わせで生まれるコラボ商品になっている」、そんなことを夢みながら、お客様や開発メンバとともに着実に共創テーマを増やし、社会課題の解決に貢献していきたいと思います。
社員全員がお客様を向いて、社会の課題、お客様の課題を直視していける組織が我々DMSだと思います。我々開発者は、社会に貢献したいという強い想いと、技術者という誇りを持って製品開発に取り組んでいます。そのようなさまざまな電子部品分野の技術者が今回岡山に結集したことで、我々が提案できる新しい価値の可能性は格段に広がったと思います。さまざまな技術が交じり合い斬新なアイデアが飛び交う、新しい価値創造へ向けた挑戦にやりがいとワクワク感をもって取り組んでいける、そんな開発拠点をDMSの技術者全員で作り上げていきたいと思います。
商品開発統括部
ファインメカ開発1部 部長
新名 正照
商品開発統括部
ファインメカ開発1部 部長
新名 正照

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