異物の徹底管理で実現、超低接触抵抗0.2mΩの領域
高容量パワーリレー 形G9KA品質担当者インタビュー

業界初*、超低接触抵抗0.2mΩを実現したパワーリレーG9KAの商品化は、開発の難易度もさることながら、品質面においても未知の領域への挑戦でした。「絶対に不良品を作らない・出さない」という強い信念のもと、徹底した異物管理により、0.2mΩを満足した製品の量産化に取り組んだ、高容量パワーリレー 形G9KA品質担当者のインタビューをご紹介します。

*2021年7月 当社調べ

パワーコンディショナ(パワコン)とは:
太陽電池パネルで作った電気を家庭やビル、工場などで使える電気に変換する精密機器です。

G9KAの主なアプリケーションであるパワーコンディショナは、製品の効率向上とコスト削減において、損失・発熱を抑えることが重要なファクターとなる機器であるため、リレーには低接触抵抗が求められます。 G9KAの最大の価値である超低接触抵抗0.2mΩを実現するための大きな課題の1つは、接点上の異物です。接点上に異物があると、電流の通り道を妨げてしまうため抵抗値が上がってしまいます。

従来のリレーは初期の接触抵抗(定格値)が100mΩなのに対し、G9KAはわずか0.2mΩです。電気的耐久性試験後であっても接触抵抗値は0.3mΩ以下(参考値)を維持し、従来のリレーの初期値を大きく下回る実力値を示します。開発上の技術的な工夫はもちろんのこと、「超低接触抵抗」という製品価値を、量産品として安定した高い品質でお客様に提供するために、我々はこの未知の0.2mΩという領域に対して、何度も検討と検証を繰り返しながら、新たな管理工程を確立しました。

異物の「発生に手を打つ」と「除去」の徹底

生産統轄本部 品質環境部 グローバル品質管理グループ 坂口 辰徳・品質統括部 品質保証1部 汎用アプリリレー品質保証グループ 吉田 雄大

異物を管理する方法は大きく分けて2つあります。「発生に手を打つ」と「除去する」です。基本的に異物の「発生」をゼロにすることは出来ません。例えば、端子をベースに圧入する場合、プラスチック部品に金属の端子を押し込んでいきますが、その際どうしても金属がプラスチックを削ってしまうため、樹脂屑が発生してしまいます。そのため通常、異物の発生を少しでも抑えるために、部品の形状や材料の工夫を設計時に行います。

しかし、極力異物を発生させない工夫を行っていても、異物の発生をゼロにすることはできません。どうしても発生してしまう異物に対しては「除去(除塵)」で対応します。圧入箇所など、異物の出やすい部分にエアーを当てて、発生した異物を吹き飛ばす作業を、部品の組み立て工程ごとに毎回行っています。発生した異物はその場で除去することを徹底しているのです。さらに、万が一各部品の組み立て工程で異物が取り切れていなかったとしても、異物が接点面に残ることのないように、最後にもう一度エアーを当てて異物除去(最終除塵)を入念に行っています。

業界トップクラス*という大きな壁に立ち向かう

G9KAの品質管理の難易度の高さの要因の1つは、構造の複雑さにあると思います。G9KAには接点が8個も存在します。仮に、接点に異物が1個挟まったとしても、もう片方の接点側で導通できてしまうため、通常の導通検査で異物を発見することは困難です。しかし、当然のことながら接点上に異物があれば、接触抵抗は上がってしまい、初期接触抵抗0.2mΩの要求仕様を達成することは不可能です。そのため、G9KAに関しては、「この方法であれば0.2mΩは絶対に満足できる」という、異物検出力をもう一段階上げる手段が必要でした。

そこで、我々が新たに取り入れた工程が「フィルタートラップ」と「接点洗浄」でした。

*2021年7月 当社調べ

サイズと種類で徹底的に異物を管理

フィルタートラップとは、きれいな水の中に製品を入れて、揺らして出てくる異物を収集し、カウントする異物管理方法の1つです。

フィルタートラップは一般的な手法で、通常、異物量の傾向確認として用いられます。異物の発生が多くなる場合、必ずどこかに原因や変化点が存在します。そのため我々は、定期的にフィルタートラップで異物量のデータを蓄積していくことで、異物量の変化や判断基準の指標としています。

しかし、G9KAではこのフィルタートラップを毎ロットごとにさらに細かな基準を設けて行っています。従来のフィルタートラップとの大きな違いは、「どの種類の、どのサイズの異物が何個接点上に存在した時に0.2mΩの接触抵抗が満足できないのか」の明確な管理基準値を設定していることです。実際に異物を接点の接触ポイントに載せて接触抵抗を測るという地道で気の遠くなるような作業を行いながらこの基準を作成しました。
この基準に則り、毎ロットごとに各種類の異物をカウントし、管理を徹底することで、異物による不良を起こさないことを徹底しています。

さらに、目視できない異物まで徹底的に除去

「異物」とは奥深いもので、目に見えるものだけが異物ではありません。接点上には、目に見えないような微細な有機物も付着していることがあります。0.2mΩという超低接触抵抗の領域ともなれば、当然それらも接触抵抗が上がる要因の1つとして考慮しなければなりません。そこで、G9KAの工程では、これらの有機物を接点上から取り除くために、接点を洗浄する工程を取り入れています。
目に見える異物は「フィルタートラップ」で、目に見えない有機物は「接点洗浄」で、G9KA最大の価値である低接触抵抗実現に立ちはだかる懸念要素を徹底的に除去しているのです。

「品質不良はなくて当たり前」が当たり前であり続けるために

生産統轄本部 品質環境部
グローバル品質管理グループ
坂口 辰徳

従来のパワーリレーでは、接触抵抗は定格100mΩなのに対して、G9KAは接触抵抗0.2mΩ以下という今まで自分が関わってきたどの商品とも全く違う厳しい規格の製品でした。すべてが新しくて、どの管理をとっても難しい、今までの当たり前が通用しない、それがG9KAでした。
今までの既存商品の常識だけでは想定できない問題に対して、工程管理という役割の中で不具合が起きる可能性を洗い出しては対応策を検討してつぶしていくという作業をひたすら繰り返しながら、今の「不具合を流出させない工程」を関係部門と協力して作り上げました。
「品質不良はなくて当たり前」、その当たり前がお客様にとって当たり前であり続けるために全力を尽くすことが、自分たち品質管理部門の成すべきことだと思っています。これからもG9KAでの経験を糧として新たな商品の品質向上と顧客満足に貢献していきたいと考えています。

「当たり前の品質」から、品質を強みに

品質統括部 品質保証1部
汎用アプリリレー品質保証グループ
吉田 雄大

今回のG9KA開発において、業界初*の0.2mΩの低接触抵抗の実現は、社内でも前例がない目標値であり、難易度が高いものでした。
当たり前ですが、製品仕様というものは、お客様とお約束している品質保証内容であり、それを「どのように工程で管理・担保し、お客様に届けるか」、また「使用中にお客様に不具合が出ないよう配慮するか」が新商品開発の品質保証部門の役割となります。
開発当初は正直、難易度の高さやどうやって担保するのかに頭を悩ませていましたが、「接触抵抗0.2mΩをお客様が求めている、それが価値となりG9KAの強み(ウリ)になる」という部分が、新商品開発ならではであり、モチベーションにつながりました。

G9KAは「低接触抵抗0.2mΩ」を最大の価値としてお客様に売っている商品です。それをどのように担保するのかに試行錯誤を繰り返し、評価試験も数多く実施しました。その分だけ、私たちは0.2mΩという価値を間違いなくお客様にお届けできると自信をもって言える管理を行えていると思いますし、不具合が発生しないという自負もあります。
G9KAは私が初めて関わった新商品で思い入れの深い商品です。G9KAがお客様の製品価値の一端になれている、そんな声が届くのを楽しみに待ちたいと思います。

*2021年7月 当社調べ

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