MOS FETリレー(無接点リレー)の基礎知識:基礎編

MOS FETリレーの定義

リレーとは外部から電気信号を受け取り、電気回路のオン/オフや切り替えを行う部品です。
主に入力側と出力側の回路間を電気的に絶縁したいときに使用され、ノイズの影響や安全面でのリスクを減らすことができます。

電気信号:入力 => リレー:制御 => 電気回路のON/OFF:出力

MOS FETリレーは、MOS FET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)を使用して制御信号をスイッチングする無接点のリレーです。
MOS FETはカプラの一種としてフォトカプラと呼ばれることもありますが、比較的歴史の新しい商品のため、各社が様々な名称・商標を付けています。
下表にMOS FETリレー(形G3VM)に相当する商品例を示します。

当社調べ:2023年12月現在

メーカ名 カタログ名称
東芝 フォトリレー
パナソニック PhotoMosリレー
沖田製作所 PhotoDMOS-FETリレー
オムロン MOS FETリレー
インフィニオンテクノロジーズ Solid state Relay
BROADCOM Solid-state relay

注. その他の会社名および製品・サービス名は、それぞれ各社が商標または登録商標として使用している場合があります。

MOS FETリレーの位置づけ

リレーは大きく分けて有接点リレー(メカニカルリレー)と無接点リレー(ソリッドステート・リレー)に分類されます。
その無接点リレーのなかに、MOS FETリレーがあります。

有接点リレー(メカニカルリレー)

有接点リレー

特長

接点を有しており、電磁石の力を利用して機械的に接点を開閉させることで、信号や電流、電圧を“入” “切” するものです。

無接点リレー(ソリッドステート・リレー)

無接点リレー

特長

有接点リレーと異なり、機械的な駆動部を持たず、半導体または、電子部品で構成されています。信号や電流、電圧の“入” “切” は、これらの電子回路の働きで電子的に行われます。

MOS FETリレー

出力素子にMOS FETを用いたプリント基板 (PCB) 向け半導体リレー


パワーMOS FETリレー

出力素子にフォトトライアックやフォトトランジスタを用いた制御盤とPCB向けパワー開閉用の半導体リレー

MOS FETリレーの種類

MOS FETリレーは無接点リレー(ソリッドステート・リレー)であり、発光ダイオード(LED)と受光素子で構成された部品であるため、フォトカプラの一種として分類できます。フォトカプラには大きく分けて3つの種類があり、主な違いは使用されている受光素子の種類です。
MOS FETリレーは、受光素子にPDA(Photo Diode Array)+MOS FETチップを搭載している製品です。

フォトカプラ:LED(発光ダイオード)+受光素子

トランジスタカプラ

LED+受光素子(フォトトランジスタ)

光で動作するトランジスタです。一方向性で直流しか制御できません。出力特性は入力電流値に依存します。

フォトトランジスタ/LED

トライアックカプラ

LED+受光素子(フォトトライアック)

光で動作するトライアックです。双方向性で交流を制御できます。一端トリガされると出力電流がゼロになるまでONしたままになるため、直流は遮断できません。

フォトトライアック/LED

MOS FETリレー

LED+受光素子(PDA+MOS FET)

光で動作するMOS FETです。直流及び交流を制御できます。出力特性は入力電流値に依存しません。機種によっては小さな入力電流でアンペアレベルの電流開閉も可能です。

MOS FET/LED

MOS FETリレーの構造と原理

MOS FETリレーは、出力素子にMOS FETを用いて、信号の切り替えを行う半導体リレーです。 メカニカルリレーが可動接点を用いて回路を開閉させる有接点であるの対し、MOS FETリレーは無接点で、高速応答、小型、長寿命、静音動作などメカニカルリレーとは異なる長所があります。

MOS FETリレーの構造

① LEDチップとは
光を発する半導体素子
入力電流に応じて発光します
② PDAチップ(フォトダイオードアレイ)とは
フォトダイオードアレイ(太陽電池+制御回路)
光を検出し発電する半導体素子
光の受光量に応じて発電しMOS FETチップのゲート電圧を供給します
③ MOS FETチップとは
トランジスタの一種
PDAチップの電圧に応じて駆動
電子回路上で信号を切り替える役割を担っています

MOS FETリレーの動作原理

MOS FETリレーの原理と働き

1.LED、2.PDA(太陽電池)、3.MOS FET
① LED
入力側に電流を通電することでLEDが発光する
② PDA
その光を出力側のPDAが受光し発電することで、再び電圧に変換する
③ MOS FET
PDAで発電された電圧が制御回路を通ってゲート電圧となり、MOS FETが駆動する

MOS FETリレーの駆動方式

MOS FETリレーには大きく分けて2つの制御方法があります。

・電流駆動方式 (MOS FETリレー 全般)
駆動電圧に応じた制限抵抗を設計することで、最適な駆動電流で使用することができる商品です。
・電圧駆動方式 (MOS FETリレー 一部シリーズ)
駆動電流の制御に必要な制限抵抗を内蔵することで省スペース化や入力側の抵抗選定を省略できる商品です。

MOS FETリレーの接点構成

MOS FETリレーには、下表のように1a接点品と1b接点品の2種類があります。

入力電流 a接点 b接点
無通電時
通電時

c接点をご要望の際は、SPDT接点構成を実現したモジュールタイプのG3VM-□Mシリーズをご検討ください。

モジュール化でさらに進化する MOS FETリレーモジュール

MOS FETリレーの接続方法

MOS FETリレーは、MOS FETチップを2個搭載することで、直流と交流の両方を扱えます。
またMOS FETリレー 6ピンタイプは、出力側端子の接続方法を変えることで以下のようなメリットがあります。

接続方法 特長 適応負荷

A接続

直流・交流の両極性を扱える

直流
交流

B接続

オン抵抗を低くできる
(A接続の1/2)

直流

C接続

負荷電流を大きくできる
(A接続の2倍)

直流

MOS FETリレーの特長

電気回路のオン/オフや切り替えを行う機能において特長となる特性をご紹介します。

  • 超小型・軽量
  • 長寿命
  • 安定したオン抵抗
  • 静音
  • 高速応答
  • 高耐電圧 など・・・・
セキュリティ、計測・通信、医療機器、産業機器、OA機器、検査機器、アミューズメント機器

超小型・軽量

VSON、S-VSONを中心とした小型パッケージが、機器全体の小型化・高密度化に貢献します。

DIP:実装 面積100%とすると、SOP:実装 面積62%、SSOP:実装 面積24%、USOP:実装 面積20%、P-SON:実装 面積19%、VSON(R):実装 面積10%、VSON:実装 面積9%、S-VSON:実装 面積8%*VSONに対して84%

長寿命

光信号伝送方式による無接点構造のため、接点消耗による寿命の劣化が発生しないのでメンテナンス頻度削減に貢献します。

安定したオン抵抗

光信号伝送方式による無接点構造のため、機械的な摩耗や消耗現象が発生しないため安定した抵抗値を維持することができます。

低消費電力

入力側の消費電力が非常に低いため、機器の省エネに貢献します。

静音

無接点構造のため、ご使用時に開閉音がありません。機器の静音化に貢献します。

高速応答

動作時間 0.2ms(SSOP、USOP、VSON)と高速な応答性を実現します。

負荷電圧

小型で高電圧の負荷開閉が可能です。高電圧回路においても省スペース化に貢献します。
負荷電圧 最大 600V品をラインアップ。

耐絶縁性

入出力間耐電圧AC2500Vを確保し、さらに高耐電圧品のの5000V製品もシリーズ化。

さらに詳しい内容については以下をご参照ください。

MOS FETリレー 製品カタログで使用される用語

MOS FETリレーのデータシートに記載されている用語について解説します。

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